佐倉ハイジ「俺様なペット」

俺様なペット (あすかコミックスCL-DX)

俺様なペット (あすかコミックスCL-DX)

以下ネタバレ。
表題作は大学を中退してしまい、ダメ人間になりつつあるモトオと、
彼を放っておけず、ついつい世話を焼いてしまうハジメのお話。
一見、何を考えているか分からないけれど、
ハジメの気を引きたくて必死なモトオが可愛いです。
ハジメに言われた一言で、大学まで辞めてしまうのは
ちょっと主体性がないようにも思いますが、
将来に不安を残してもハジメの気を引きたい
彼の頑張りに好感。
ハジメの太腿に縋りついて
「一匹どーよ? 御主人様」
の台詞は圧巻です。
そんなシチュエーションでそんな台詞を言われたら、
腰がくらっとしてしまいそうです。
さらに「御主人様」と言いながら
足にキス(噛み付き?)するシーンは
ペットと云うより奴隷のようです。


収録作「てつ・らぶ」は
鉄道マニアの二人と云うBLらしからぬカップリング。
暇を持て余して、いつもコンビニでアイスを
食べてる高校生の佐原くんと、
同じコンビニでいつもパンを買い食いしている宮本さん。
宮本さんが佐原くんを見ての一言
「…年中アイス食ってるよね…」と、
そう言われた佐原くんの心の声
「…いつもパン食ってる人…」は
何度読んでも味わい深く感じるほど
このやりとりがツボにはまってしまいました。
正直、鉄道や電車のネタは良く分からないし、
特段興味もないので入り込めないのですが、
部外者が入り込めない二人と云うのは
何だか羨ましい気がします。
宮本さんがちゃんとした社会人で、
なおかつ、修士号取得を目指していると云うのが又なんとも。
邪な目的で博士(はかせ)と呼ばれたいが為に、
最終(?)目標が博士号取得とと云うのは
自分に通じるものがあって笑ってしまいました。
(自分は「はかせ」よりも、
 ドクターって呼んで欲しかったのですけど。)


収録作「酩酊ドッグナイト」では
酔うと必ずガラクタをお持ち帰りしちゃう柳さんと、
彼のバイト時代に一緒に働いていた白岩くんが
柳さんの客引き業務中に偶然再会して、
意気投合して酔っぱらって、
ラクタ同様白岩くんを持ち帰って…と云うお話。
柳さんの持ち帰り癖(そして捨てない)はどうかと思いますが、
自分を棚に上げて白岩くんの落ちぶれぶりを嘆いたり、
生理的にキスが嫌だけど
セックスはゴムがあるから平気だと言ったり、
構われるのは嫌だけど
白岩くんの心が離れていってしまうのを怖がったりする
アンバランスな感覚・感情が好きです。


収録作「春が来ても夏が来ても秋が来ても」は
美容師さんのお話。
世話になった先輩の兵庫さんを慕って、
いつまでも義理立てする理人くんがいじらしいです。
ともすれば、重いと思われちゃうかもしれませんが、
自分としてはこのくらい想われていると
嬉しいんじゃないかなあ。
プロ同士とは言え、
髪を洗ったり、洗われたりする関係は
何だかいやらしいなあと思ったり(羨ましくもあります)。
収録作「てつ・らぶ」でも頭を触られるとぞくっとすると云う
表現が出てきていましたが、
確かに性感帯と云う言い方は言い得て妙だなあと思います。
脇役で、理人の勤める美容院のライバル店に所属する
花丸くんが良い味出してます。
彼もきっと理人くんが好きなのだなあと思います。
だって彼の行動には愛情が溢れているじゃないですか。