恋する暴君

遂に出ました、高永ひなこの「恋する暴君*1」。
「チャレンジャーズ」シリーズの宗一&森永ペアのお話。
お気に入りはヒロトくん。
あの関西弁に、「チャレンジャーズ」の頃からやられっぱなし。
「心身の健康のためにも
 一回くらいボクと
 しといたらええのに…!!」と云う
本音が出ちゃう辺りがとても魅力的。


以下、ネタバレ。


本作の森永くんはかな〜りアグレッシヴで
随分と驚かされました。
「チャレンジャーズ」のイメージを引きずっていた当初は
いつまでたっても進展しないんじゃないか、
でも報われない日常を淡々と描くストーリーも良いかな、
なんて考えていたのですけど、
蓋を開けてみると全く違う様相にちょっと唖然としてしまいました。
酒と(あやしい)薬の酩酊状態の中にあったとはいえ、
そして通常の状態では進展が覚束ないとはいえ、
無理やり宗一を襲ってしまうのはちょっと抵抗がありました。
半ばレイプっぽい印象も拭えませんでしたし。
第一、宗一のゲイに対する偏見もレイプに起因するものだけに、
似たような道程を経るのは正直避けて欲しかったなと思います。
身体を重ねることで情が移ることがあるのは否定しませんし、
何より声を聞いただけで心が震えてしまうほどに
「好き」と云う感情が溢れてしまう状況に同情を禁じ得ませんけど、
それでもやっぱり…と云う気がしないでもない。
それともここまで否定的感情が私の中に渦巻くのは
自分で超えられないライン(レイプすることではないよ)を
彼が容易く超えてしまった勇気(あるいは暴走)に
嫉妬をしているからかもしれません。


宗一は前作よりもちょっと弱くなった気がします。
森永の喪失を危惧する感情は前作からありましたけど、
ここまで顕著になるとは…。
感情の発露に乏しかった彼がここまで意志を明示するようになるのは
子供の成長を見守る親のような気分です。
それにしても宗一が受かー…。
ヘタレ攻は嫌いではないですが、
半ばプラトニックなカップルをイメージしていただけに抵抗感があります。
どんどんヘタレになっていく宗一も
見ていて微笑ましいのですけど。


巻末のコメントで「●内洗浄とゴム着用はホモのたしなみ」と書かれてますが、
BLは謂わばファンタジーだと思っているので
そこらへんは特に気にしたことはないのですが、
宗一がシャワーを浴びるシーンで
あからさまな描写があると(しかも2回も!)、
ちょっとな〜と考えさせられます。
森永くん、もうちょっと配慮してあげようよ。


ともあれ、前作から通底する作風はとても好きで、
今後も続編があることは喜ばしいです。
いっぱいいっぱいな宗一の表情を見るのは好きですから。

*1:

恋する暴君 (GUSH COMICS)

恋する暴君 (GUSH COMICS)