神さまに言っとけ

榎田尤利の「神さまに言っとけ*1」を読み終えました。
id:mou-mou様からの紹介が余りに気を惹くものだったので、
矢も楯もたまらなくなり、
速攻で購入して通読してしまいました。
物語の優しい語り口と、
紺野キタの柔らかいタッチの絵が調和していて、ポイント高いです。
純粋で、直向きな花への愛情を寄せる眞。
清水の皮(?)を被った惣田。
神の意志で出会った二人は互いに変わって行きます。
特に終盤に到る惣田の心理的変遷は劇的で、
そこに介在する感情―眞への愛情―が惣田を衝き動かす様に
感動してしまいました。
終盤、軽い口調で言った
「俺みたいなのが死んでも、
 悲しんでくれる人がいたら嬉しいなあ」
と云う言葉に、
惣田は実は重い気持ちを込めてるのではないかと思います。
自分もそんな思いにかられたことが一度や二度ではないので。
ともあれ、すごい殺し文句だと思うぞ。


笠井牧師曰く、眞は
「他人の領域に自分が入ることや、
 他人を自分の領域に招くことが苦手」で、
自分もそうだなあと思ったり。
自分も眞も多分、信頼して身を任せるのが苦手なのだと思います。
信頼が裏切られて自分が傷付くことが怖いから。
そんな眞が惣田と出会って、
内向的な状態から脱し、自分の想いを外に出せるようになって
良かったと思う反面、自分が置いていかれた気になったり。
(物語の登場人物相手に焦燥してどうする、自分…(涙))
ところで、最初のもっさりしている眞も好きだなあ。


このお話は、神、天使、聖書と云う、
BLにはちょっと重たいプロットで始まりましたが、
あのエンディングに到るための道程と思えば苦にならないかも。
特に聖書。
平時に読んでいても退屈に思えるあの本も、
感傷的な時に読むと胸を刺されたような強い感覚に見舞われます。
エンディングの「ヨハネ福音書」の引用にヤラレタ。
ホロリとしてしまいました。

*1:

神さまに言っとけ (SHYノベルス)

神さまに言っとけ (SHYノベルス)